第二次世界大戦の解説

マレー沖海戦

プリンス・オブ・ウェールズ

 イギリスは日本軍の南下を予想し、東洋の拠点シンガポールに戦艦五隻、巡洋戦艦一隻、航空母艦三隻という強力な艦隊を配置する計画を立てた。

 しかし実際にはドイツの相手で精一杯だったため、派遣できたのは戦艦「プリンス・オブ・ウェールズ」と巡洋戦艦「レパルス」、そして駆逐艦四隻に留まった。それでもプリンス・オブ・ウェールズは最新鋭戦艦であり、十分に強力なものだった。

 このとき東南アジアに配備されていた日本の戦艦は「金剛」と「榛名」だったが、どちらも元々巡洋戦艦で装甲が薄く老朽艦なので、イギリス東洋艦隊の存在は脅威だった。

航空機による攻撃

 12月7日、日本軍のマレー半島攻撃を察知したイギリス東洋艦隊は、これに打撃を与えるためにシンガポールを出撃した。

 プリンス・オブ・ウェールズの出撃を知った日本海軍は、付近にいた重巡洋艦五隻、軽巡洋艦二隻、駆逐艦四隻を向かわせた。戦艦を相手にするには不利だが、夜戦に持ち込めば勝機はあるとの判断だった。

 しかし日本艦隊はイギリス艦隊を発見できなかった。

 日本軍は新鋭機の一式陸上攻撃機でイギリス艦隊を迎え撃つことにした。当時、航行中の戦艦を航空機による攻撃で沈めるのは不可能とされていたが、やむを得なかった。

 一方、イギリス東洋艦隊のフィリップス提督は日本軍航空機からの可能性について、沖合を航行すれば問題ないと考えた。日本軍の攻撃機はそんなに遠くまで飛べないと思っていたのである。フィリップスもまた、戦艦を航空機で撃沈することはできないと考えていた。

 12月10日12時45分、日本軍の最初の空襲が行われた。九六式陸上攻撃機八機が後方にいたレパルスに爆弾を投下した。そのうち二機が対空砲火で炎に包まれ、残りも追い払われた。イギリス戦艦の対空砲は日本やアメリカのものより強力だった。

 続いて攻撃機十七機が魚雷を投下し、このうち二本がプリンス・オブ・ウェールズに命中した。これのとき発電機が故障して対空砲が使用不能になり、浸水が始まった。さらに攻撃機八機がレパルスに向けて魚雷を投下、三本が命中した。

 しばらくして、第二波の攻撃隊が到着した。一式陸上攻撃機二十六機が魚雷を投下し、プリンス・オブ・ウェールズに四本、レパルスに五本命中した。レパルスが対空砲を乱射しながら沈んでいった。

 次に到着した九六式陸上攻撃機十七機がプリンス・オブ・ウェールズに五百キロ爆弾を投下し、そのうちの二発が命中した。プリンス・オブ・ウェールズは爆発後、ゆっくりと沈んでいった。乗員の八割は脱出することができた。

 プリンス・オブ・ウェールズとレパルスは航空支援もない状態で百機以上の攻撃機に襲われた。沈没するのも当然といえば当然のことだったが、イギリスの誇る新鋭戦艦が日本軍の航空機に沈められたことは、世界に衝撃を与えた。