第二次世界大戦の解説

第二次世界大戦とギリシャ

ギリシャ

 ギリシャは第一次世界大戦で連合国側として参戦し、オスマン帝国から多くの領土を奪い取った。オスマン帝国は革命が起こって滅び、トルコがその地位を継承した。

 1940年10月、イタリア軍がアルバニア国境からギリシャに侵攻を開始した。ギリシャは自然と連合国側に立つことになった。ギリシャ軍はイタリア軍の撃退に成功した。

 これを見てバルカン半島をイタリアに任せておけないと考えたドイツは、ソ連への攻撃を延期してユーゴスラビアとギリシャへ侵攻することにした。

ドイツの占領下

 1941年4月にドイツ軍がギリシャ侵攻を開始した。ギリシャ軍はイギリスの援軍とともに抵抗したが、首都アテネが陥落してギリシャ国王と政府はクレタ島に逃亡した。クレタ島ではしばらく抵抗を続けたが、ドイツの落下傘部隊に占領された。

 全土を占領されたギリシャは、ドイツ、イタリア、ブルガリアに分割統治されることになった。イタリアがペロポネソス半島、ブルガリアが東マケドニア、それ以外の地域はドイツが統治することになった。

 ギリシャではドイツ軍が資源や食料を奪ったため、深刻な飢餓が発生した。経済は壊滅状態になり、強烈なインフレーションが発生した。パンの値段は跳ね上がり、アテネでは道路に死体が横たわっている光景が日常になる有様だった。

 あまりに苛烈なドイツの占領政策には、同盟国であるイタリアのムッソリーニでさえ不満を持っていた。

 ギリシャの抵抗運動は他国よりも激しく展開された。共産党を中心に民族解放戦線が組織され、民族解放軍が結成された。これらの組織にはギリシャ国民の3分の1にあたる200万人が参加した。

 レジスタンスはアテネとテッサロニキを結ぶ鉄道を破壊し、ドイツ軍の北アフリカへの補給路を遮断した。民族解放軍は山岳地帯で勢力を拡大し、その支配地域を「自由ギリシャ」と呼んで抵抗を続けた。

新政府と民族解放戦線

 民族解放戦線は共産党系だったため、ギリシャで共産党の影響が強まることを嫌ったイギリスは支援を打ち切った。すると民族解放戦線は他のレジスタンス組織を敵と見なして攻撃するようになった。こうしてギリシャは内戦状態になった。

 ドイツの傀儡政権は治安維持のため、市民に治安大隊への加入を呼びかけた。治安大隊には民族解放戦線に恨みを持つ市民が加入していった。

 やがてドイツ軍はギリシャから撤退した。この時点では民族解放戦線が主導権を握っていたが、彼らはソ連の支援を得ることはできなかった。

 ソ連はイギリスやアメリカと話し合って、ギリシャの勢力圏はイギリスのものにすると決めていたのだった。ギリシャの新政府と民族解放戦線はアテネを戦場に、主導権を争った。イギリスは政府軍を支援するために、武器と兵士を提供した。

 こうして民族解放戦線は武装解除されたが、ギリシャ市民の左翼や共産主義者に対する恨みは強烈で、次々と関係者が襲われる事態になった。この「白色テロ」に対して政府は黙認する態度をとり続け、ギリシャは強烈な反共産主義国家に変貌したのだった。