第二次世界大戦の解説

ノルディキズム ヒトラーのアーリア人思想と北方人種至上主義

ノルディキズム

 ヒトラーは差別主義者だった。ユダヤ人を迫害したことで知られているが、それ以外にも民族によって扱いに大きな差をつけていた。

 彼が理想とするのは「白い肌」「青い瞳」「金髪」という民族だった。これら三種類が揃った人はヨーロッパでもそんなに多くはなかった。ヒトラーが最も重視した「純粋アーリア人」は、これらの条件を満たしていた。

アーリア人

 1780年頃にインドのサンスクリット語とヨーロッパの言語に共通点が多いという発見があった。これを根拠に、インド人とヨーロッパ人は元々同じ民族だったという説が生まれた。インド人とヨーロッパ人はインド・ヨーロッパ語族と呼ばれ、別名「アーリア人」と呼ばれた。

 ヒトラーは「アーリア人」を最も高貴な民族だとした。ナチスの鉤十字(ハーケンクロイツ)はアーリア人優越を象徴としたものだった。

 アーリア人に含まれるのはヨーロッパ人、インド人、イラン人、小アジア(トルコ)人とされた。アラブ人、ユダヤ人はインド・ヨーロッパ語族ではなくセム語族なので、アーリア人ではなかった。

 もちろん東アジア人はアーリア人ではないので、ヒトラーにとって日本人は二等人種という扱いだった。ただし、同盟を結んでから日本人は「名誉アーリア人」に昇格した。

ノルディキズムとヒトラー

 アメリカの社会学者リプリーはヨーロッパ人を北方人種、地中海人種、アルプス人種に分け、頭が長い順に北方人種、地中海人種、アルプス人種の順に優れているという説を立てた。これをノルディキズムという。

 北方人種はノルウェー、スウェーデン、ドイツ、イギリスなど、地中海人種はイタリア、ギリシア、スペインなど、アルプス人種はドイツ南部、フランス南部、ロシア、オーストリア、東欧などを指す。実際にノルウェーやスウェーデンには「白い肌」「青い瞳」「金髪」の条件を満たす人が多かった。

 ヒトラーはノルディキズムが大好きだったので、ドイツが占領した後の扱いは北欧諸国に対しては寛大で、ポーランドやソ連に対しては厳しい政策をとった。

 ドイツ人の民族であるゲルマン民族の優れた遺伝子を残すため、ヒトラーはドイツの若い女性を手厚く支援した。また、健康な肉体こそ優れた民族であるといってスポーツを奨励した。ナチス親衛隊も高身長、金髪、青い瞳の者が優先的に採用された。

 逆に「劣等人種」であるユダヤ人、スラブ人などの繁殖は抑えなければならないと考えていた。ドイツ人は優れた民族であり、劣等民族を支配しなければならなかった。

 なお、ヒトラー自身は金髪でも碧眼でもなかった。